ペンギン・ハイウェイ

唐突にこれを読んだのは、本作がSFだとかそうでないとかを見たからなので、一応SF読みとしてSFなのか考察したい。

SFの定義は割と曖昧なので、ハッキリしたことは何とも言い難い。参照しやすいWikipediaあたりを見ても、何かの定義になっているようには到底思えない。「そういうもの」がSFである。

言いようによっては、SFというものには不確定性があるのだろう。確かに「SFという何か」がありそうなのだが、一つのものさしで観測するとその他が曖昧になってしまうのだ。これは難しい相手である。

細かいことを考えずにモチーフとアプローチで区切るなら、舞台装置としてSF的モチーフを使用しているとは言えよう。同様のことは同作者の「四畳半」のほうについても指摘できる。

本書で主役になる「海」は、ある意味では四畳半世界と同様の性質を持ったものであるとも考えられる。どうやらそう言った世界観がお好みらしい。少なくとも「SFマインドのある作家である」とは結論できそうだ。

ただし、その秘密、そのメカニズムに直接アプローチすることはない。この辺りがSFなのかそうでないのかの論争を産んでいるのかもしれない。

SF読み的なSF考察をともかくとすると、全体的にたんたんと静かに進むが、何とも言えない懐かしさや、身に覚えのある感覚などが面白い。おそらくこれはそういう小説であって、上記のようにSFがどうたら言っているのは、たぶん無粋なのである。

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)