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箱男

自分はSF読みであるが、嫁(文系)のオススメでなぜか安部公房を読むことになった。SF読みと文学読みの共有可能なジャンルは、先鋭的純文学(?)であったらしい。

あらすじや解説などを読むと、匿名性の追求やらということになっている。自分もそういう小難しいことが言ってみたいが、SF読みからすれば、物語世界の枠組みを踏み越えてしまうメタな設計などがぐっとくるように思う。「匿名性とは」「箱男とは」ではなくて、「この物語が合理的に書かれうる状況とは」を考えると大変面白い。

文章中に新聞記事風の文章や写真資料、注釈が入っていたりと、ユーモアの多い文章で、それ自体楽しめる。しかしそもそも注釈をいれたのは誰なのか。本人には書き得ない注釈もある。実は、一節ずつ別の人物・人格が書いて、場合によっては前の物語にはみ出し、上書きしてしまっているのではないか。

誰か書いたかわからない文章の連鎖。「はてな匿名ダイアリー」みたいなものだと考えると簡単だが、ウェブの全体についても大差はない。ウェブだなんだと言っても結局現実世界の延長である。匿名性の追求により至った世界は、既に現出しはじめているのかもしれない。

文学作品なんて、多様な解釈があって良いと思うのだけれど、これだけいろんな楽しみ方ができるのは、やはり良い作品だよなぁと思った。

箱男 (新潮文庫)